2026/09/24
「散歩に行きたがらなくなった」
「階段を使わなくなった」
「寝ている時間が増えた」
愛犬や愛猫に、このような動きの変化はありませんか。
シニア期になると動きがゆっくりになるため、飼い主様は「歳だから仕方ない」と受け止めてしまうことがあります。しかし、その変化には、関節炎による痛みが関係しているかもしれません。
関節炎は徐々に進行することが多いうえ、犬や猫では痛みが分かりやすい行動として表れない場合もあるため、飼い主様が気付きにくいことがあります。また、飲み薬や月1回の注射など、痛みを和らげるための選択肢は増えています。
今回は、犬と猫の関節炎について、見逃しやすいサインや検査、治療、ご家庭でできるケアを解説します。
■目次
1.犬と猫の関節炎とは?
2.犬と猫で異なる関節炎のサイン
3.関節炎はどのように診断する?
4.犬・猫の関節炎の治療|月1回の注射も選択肢に
5.ご家庭でできる関節への負担を減らす工夫
6.まとめ
犬と猫の関節炎とは?
関節炎とは、骨と骨をつなぐ関節に炎症や変化が生じ、痛みや動かしにくさが表れる状態です。なかでもシニア期の犬や猫で注意したいのが、関節軟骨の変性や骨の変化などが進む「変形性関節症」です。
変形性関節症は加齢とともに増える傾向がありますが、シニア期の犬や猫だけに起こるわけではありません。次のような要因も発症に関係します。
・肥満による関節への負担
・過去の骨折や関節のケガ
・膝蓋骨脱臼(パテラ)
・前十字靱帯の損傷
・股関節や肘関節などの形成異常
・遺伝的な体質
・関節に負担がかかる生活環境
変形性関節症は徐々に進行することがあり、治療を行っても変化した関節を元どおりにすることは難しい場合があります。しかし、痛みを管理しながら関節の動きや筋力を保つことで、その子らしい生活を続けられる可能性があります。
足を突然引きずる場合には、関節炎以外にも骨折や靱帯の損傷などが考えられます。詳しくは以下をご覧ください。
犬と猫で異なる関節炎のサイン
関節炎があっても、必ず足を引きずるとは限りません。特に猫は痛みを隠す傾向があり、歩き方よりも日常の行動に変化が表れることがあります。
<犬の場合>
犬では、次のような様子が見られます。
・寝起きに動きがぎこちない
・散歩の途中で立ち止まる、帰りたがる
・歩く速度が遅くなった
・階段や段差を嫌がる
・車やソファに飛び乗れなくなった
・足をかばう、引きずる
・足先や関節の周辺を繰り返しなめる
・体を触られることを嫌がる
<猫の場合>
一方、猫では、次のような変化が痛みのサインになることがあります。
・高い場所へ上らなくなった
・上る前にためらうようになった
・上から下りる際に、一度に飛び降りなくなった
・毛づくろいが減り、毛並みが乱れてきた
・爪とぎをしなくなった
・縁の高いトイレを使いにくそうにする
・遊ぶ時間や動く範囲が減った
・抱っこや体に触れられることを嫌がる
・トイレ以外の場所で排泄するようになった
こうした変化は、単なる加齢や性格の変化に見えるかもしれません。以前できていたことをしなくなった場合は、関節の痛みも疑ってみましょう。
関節炎はどのように診断する?
関節炎が疑われる場合は、普段の様子を確認したうえで、歩き方や姿勢、関節の動き、筋肉のつき方などを診察します。
必要に応じてレントゲン検査などを行い、骨の変形や関節の状態を確認します。ただし、画像上の変化と痛みの程度が必ずしも一致するとは限りません。そのため、検査結果だけではなく、ご家庭での行動の変化を含めて総合的に判断することが大切です。
「いつから動きが変わったか」「どのような場面で動きにくそうか」を伝えていただくと、診断の手がかりになります。歩き方や段差を上り下りする様子をスマートフォンで撮影しておくのもよいでしょう。
犬・猫の関節炎の治療|月1回の注射も選択肢に
関節炎の治療では、痛みを和らげることに加え、筋力や関節の動きをできる限り保つことを目指します。主な治療方法は次のとおりです。
<痛みを抑える薬>
関節の炎症や痛みを抑えるため、飲み薬などを使用することがあります。持病や年齢、体の状態によって適した薬は異なるため、必要に応じて検査を行いながら治療方法を検討します。
また、人用の痛み止めは、犬や猫に中毒を起こすおそれがあるため、飼い主様の判断で与えないようにしてください。
<月1回の注射>
近年では、犬や猫の変形性関節症に伴う痛みを和らげるために、月1回を目安に投与する注射薬も選択肢のひとつとなっています。ただし、治療への反応には個体差があり、副作用が表れる可能性もあるため、体調や持病などを確認したうえで使用を検討します。
注射薬は、毎日の投薬が難しい犬や猫にとって、治療を継続するための選択肢になる場合があります。ただし、すべての犬や猫に適しているわけではありません。また、傷んだ関節そのものを元に戻す治療ではないため、投与後も症状や体調を定期的に確認する必要があります。
使用できる薬や投与間隔は、その子の状態によって異なります。希望される場合は、診察時に獣医師へご相談ください。
<体重管理と運動>
体重が増えると関節にかかる負担も大きくなります。食事量を調整し、適正体重を目指すことも治療の一環です。
また、痛みがあるからといって運動を完全にやめると、筋力が低下しやすくなり、さらに動きにくくなる場合があります。状態に合わせて、短時間の散歩や緩やかな運動を続けましょう。ただし、急なダッシュやジャンプなどは避け、運動量は獣医師と相談しながら調整してください。
ご家庭でできる関節への負担を減らす工夫
治療とあわせて生活環境を見直すと、犬や猫が動きやすくなる場合があります。
・フローリングに滑りにくいマットを敷く
・ソファやベッドの近くに低いステップやスロープを設置する
・寝床を段差の少ない場所に置く
・食器を食べやすい高さに調整する
・猫のトイレを出入りしやすいものに替える
・猫が一度に高く跳ばずに済むよう足場を設ける
・爪や足裏の毛を定期的に整える
・冷えやすい時期は室温や寝床を調整する
なお、痛がる関節を無理に曲げたり、自己流で強くマッサージしたりすると、かえって負担をかけることがあります。触れ方や運動方法について不安がある場合は、動物病院で確認しましょう。
まとめ
犬や猫の関節炎では、足を引きずるだけでなく、「散歩を嫌がる」「高い場所に上らない」「寝ている時間が増えた」など、日常のささいな変化が痛みのサインになることがあります。
年齢を重ねたことによる変化に見えても、痛みを和らげる治療や生活環境の工夫によって、動きやすさを支えられる場合があります。現在は飲み薬のほか、月1回の注射なども選択肢のひとつです。
当院では、犬や猫の年齢、持病、生活の様子などを確認しながら、その子に合わせた治療方法を検討します。「歳だから仕方ないのかも」と迷うような変化も、まずはお気軽にご相談ください。
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