2026/05/07
愛犬や愛猫に「よく吐く」「下痢がなかなか治らない」「少しずつ痩せてきた」といった症状が見られると、不安を感じながらも「一時的な胃腸炎かもしれない」と様子を見てしまう飼い主様も多いのではないでしょうか。
実際に、犬や猫では一過性の胃腸トラブルも珍しくありません。しかし、その症状が慢性的に続いている場合には注意が必要です。胃や腸にできる腫瘍、いわゆる消化管腫瘍が隠れている可能性があります。
そのため、「いつもと同じ不調」と思い込まず、違和感が続く場合には早めに動物病院を受診することが大切です。
そこで今回は、犬や猫の消化管腫瘍について、症状の特徴や検査の重要性などを解説します。
■目次
1.危険なサイン
2.胃や腸にできる腫瘍の種類
3.かかりやすい傾向|中高齢+慢性的な胃腸症状は要注意
4.診断方法
5.治療方法
6.まとめ
危険なサイン
嘔吐や下痢は日常的にも見られる症状ですが、以下のような経過をたどる場合には注意が必要です。
・薬を飲むと一度よくなるが、しばらくすると再び症状がぶり返す
・食欲があるにもかかわらず、体重が徐々に減っていく
・嘔吐や下痢が長期間にわたり続いている
このような変化は、「単なる胃腸炎ではないかもしれない」という重要なサインです。特に、体重減少を伴う場合は、体の中で腫瘍などの重大な異常が進行している危険性があります。「体質だから」「いつものことだから」と自己判断して様子を見続けず、症状が慢性的に長引いている場合は、まずは精密検査で本当の原因を突き止めることが大切です。
胃や腸にできる腫瘍の種類
犬や猫の消化管にできる腫瘍にはいくつかの種類がありますが、代表的なものとして以下が挙げられます。
<腺癌(胃がん・腸がん)>
胃や腸の壁にしこりを形成する悪性腫瘍で、進行が比較的速い傾向があります。リンパ節や肝臓、肺などに広がる場合もあり、発見された時点で進行しているケースも少なくありません。
<リンパ腫>
消化管全体に広がるタイプの腫瘍で、症状が一時的に改善したり再び悪化したりと、波のある経過をたどる場合があります。特に猫では比較的多く見られ、シャム猫では発症リスクが高い傾向が知られています。
【前編】犬や猫のリンパ腫の症状についてより詳しく知りたい方はこちら
【後編】犬や猫のリンパ腫の診断・治療の流れについてより詳しく知りたい方はこちら
なお、腫瘍の種類によって治療方針や経過は大きく異なるため、正確な診断が重要になります。
かかりやすい傾向|中高齢+慢性的な胃腸症状は要注意
消化管腫瘍は、中高齢の犬や猫で発症しやすい傾向があります。
また、猫では慢性腸炎との見分けが難しい場合もあり、見た目の症状だけで判断するのは困難です。
しかし、年齢だけで判断するのではなく、症状の持続期間にも目を向ける必要があります。
例えば、長期間にわたって嘔吐や下痢を繰り返している場合、「体質だから大丈夫」と見過ごされてしまうケースもあります。しかし、その裏に腫瘍が隠れている可能性も否定できません。
症状が続く場合や回数が増えている場合には、早めに動物病院で検査を受け、原因を特定することが重要です。
診断方法
消化管腫瘍の診断をするためには、エコー検査や内視鏡検査を行うことが重要です。
・エコー検査:腸の厚みやしこりの有無を確認します
・内視鏡検査:胃や腸の内部を直接観察し、生検によって確定診断につなげます
ただし、内視鏡検査はすべての動物病院で実施できるわけではありません。施設によっては専門病院への紹介が必要になる場合もあります。
なお、当院ではエコー検査に加えて内視鏡検査(生検)にも対応しています。原因を明確にすることが、その後の治療選択に大きく関わるため、まずは当院で状態を詳しく確認していきましょう。
治療方法
消化管腫瘍の治療は、腫瘍の種類や進行度、全身状態に応じて選択されます。
<腺癌(胃がん・腸がん)の場合>
外科手術によって腫瘍を切除することが基本となります。ただし、発見時にはすでに周囲の臓器や遠隔部位へ広がっているケースもあるため、手術だけでなく、状態に応じて術後の補助的な治療を検討する場合もあります。また、進行度や全身状態によっては、無理に切除を目指さず、症状の緩和を優先する選択を行うこともあります。
<リンパ腫の場合>
外科手術よりも抗がん剤治療が中心となります。治療によって症状の改善が期待できるケースもありますが、再発や再燃を繰り返すこともあるため、経過を見ながら治療内容を調整していく必要があります。また、体への負担や生活の質を考慮しながら、緩和的な治療を選択する場合もあります。
また、当院ではインフォームドコンセントを大切にしており、飼い主様と十分に話し合いながら治療方針を決定しています。必ずしも「完治」だけを目指すのではなく、生活の質を維持するための緩和ケアを選択する場合もあります。
さらに、補助的な治療として高濃度ビタミンC療法やがんワクチンをご提案するケースもあり、その子の状態やご家族のご希望に合わせて柔軟に選択肢を広げています。
なお、高度な設備や専門的な対応が必要と判断した場合には、連携している専門病院をご紹介し、適切な医療につなげていきます。
まとめ
慢性的な嘔吐や下痢、そして体重減少は、見逃してはいけない危険なサインです。特に、「食べているのに痩せてきた」といった変化は、体の中で異常が進行している可能性があります。
早い段階で検査を行うことで、治療の選択肢が広がったり、体への負担を抑えた対応ができたりする場合もあります。そのため、「いつもの胃腸炎」と決めつけず、違和感が続く場合には早めに相談することが大切です。
なお、当院では消化管腫瘍をはじめとしたさまざまな症状に対して、検査から治療まで一貫して対応しています。気になる症状がある場合には、まずは診察にお越しいただき、その子に合った最適な方針を一緒に考えていきましょう。
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