2026/03/06
愛犬や愛猫が突然「がん」と診断されたとき、飼い主様の多くは強い不安や戸惑いを感じると思います。「どんな治療があるのだろう」「本当に治るのだろうか」と、次々に心配が浮かんでくるのは自然なことです。
犬や猫のがん治療にはいくつかの選択肢があり、治療のゴールも「これが唯一の正解」と決まっているわけではありません。大切なのは、正しい情報を知ったうえで、その子に合った治療を飼い主様と一緒に考えていくことです。
そこで今回は、犬や猫のがん治療について、基本からわかりやすく解説します。
■目次
1.がんと診断されたら?治療の目的を整理しましょう
2.基本となる犬・猫のがん治療「3大療法」とは?
3.それぞれのメリット・デメリットと当院の対応
4.標準治療を支える「プラスアルファの選択肢」
5.「その子らしい」治療方針を一緒に決めましょう
6.まとめ
がんと診断されたら?治療の目的を整理しましょう
腫瘍治療と聞くと、「完治を目指すもの」と考える飼い主様が多いかもしれません。もちろん、早期に発見され、完全に取り除ける場合は完治が期待できます。
一方で、腫瘍の種類や進行度、年齢や体力によっては、以下のように治療の目標が変わる場合もあります。
・腫瘍を取り除き、再発を防ぐことを目指す
・進行を抑えながら穏やかに過ごす
・痛みや不快感を和らげ、生活の質を守る
このように「完治」だけでなく、腫瘍の種類や進行度、状態に応じて「共存」や「緩和」という考え方も重要です。また、治療方針は腫瘍の種類だけで決まるものではありません。犬や猫の年齢や体力、持病の有無、飼い主様のご希望、通院の負担などを総合的に考えて決定します。
そのため、診断後はすぐに結論を出すのではなく、獣医師と相談を重ねながら方向性を整理していく流れが大切です。
基本となる犬・猫のがん治療「3大療法」とは?
犬や猫のがん治療の柱となるのが、いわゆる以下のような「3大療法」です。これは標準的な治療法であり、多くの症例で検討されます。
<外科手術>
腫瘍そのものを切除する治療です。体表の腫瘍などでは第一選択になるケースが多く、転移がない段階で完全に取り除ければ、長期的な予後が期待できます。
<抗がん剤(化学療法)>
薬剤を用いてがん細胞の増殖を抑える治療です。治療中も日常生活をできるだけ保てるよう、副作用に配慮しながら進めていくのが一般的です。
<放射線治療>
放射線を照射し、がん細胞にダメージを与える方法です。特定の腫瘍に対して有効で、手術が難しい部位でも選択肢となります。
それぞれの治療には役割があり、単独で行う場合もあれば、組み合わせて行う場合もあります。
それぞれのメリット・デメリットと当院の対応
どの治療法にも「向き・不向き」があり、それぞれのメリット・デメリットを考えながら選択していく必要があります。
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 外科手術 | ・転移前で完全に除去できれば完治が見込める | ・全身麻酔が必要 ・術後合併症のリスク |
| 抗がん剤 | ・広範囲の腫瘍に有効 ・日帰りで治療できる |
・副作用が起こる可能性がある ・長期的な治療が必要 |
| 放射線治療 | ・痛みが少ない ・正常な細胞へのダメージが最小限で済む |
・全身麻酔が必要 ・副作用のリスク |
当院では、体表の腫瘍の外科手術など、院内設備で安全に対応できる手術については幅広く実施しています。一方で、放射線治療が必要な場合や、出血リスクが高く輸血設備が求められる手術、解剖学的に難易度の高い部位の腫瘍については、安全面を最優先に考え、二次診療施設をご紹介しています。
より整った環境での治療が望ましいと判断した場合に、責任をもって連携し、治療まで丁寧にコーディネートします。
標準治療を支える「プラスアルファの選択肢」
3大療法を軸としながら、補助的な治療を組み合わせる場合もあります。当院では、以下のような選択肢にも対応しています。
<高濃度ビタミンC療法>
抗酸化作用をもつビタミンCを高濃度で点滴する補助療法です。標準治療と併用しながら、副作用の軽減や体調維持を目的として取り入れる場合があります。
<がんワクチン(免疫療法の一つ)>
体の免疫機能に働きかけ、がん細胞の増殖を抑えることを目指す治療法です。3大療法を補う位置づけとして検討されます。
これらはすべての犬や猫に適応するわけではありません。しかし、標準治療だけでは十分な効果が得られない場合や、副作用をできるだけ抑えたい場合などに、選択肢を広げる手段となります。
なお、高濃度ビタミンC療法や免疫療法に対応している施設は多くないため、当院だからこそできる選択肢です。
「その子らしい」治療方針を一緒に決めましょう
がん治療に「絶対の正解」はありません。積極的に治療を進める選択もあれば、緩和ケアを中心に穏やかな時間を大切にする選択もあります。
なお、当院ではインフォームドコンセントを大切にしています。検査結果や治療の内容、考えられるメリットや注意点を丁寧にお伝えしたうえで、飼い主様のお気持ちや生活環境、そして愛犬や愛猫のQOLを最優先に考えます。
その過程で、飼い主様からのご質問に一つひとつ向き合い、治療の選択肢を比較しながら整理していきます。そして最終的に、その子にとって最も納得できる道を一緒に探していきます。
まとめ
犬や猫のがん治療には、手術・抗がん剤・放射線といった標準治療があり、それぞれに役割があります。また、高濃度ビタミンC療法や免疫療法など、治療を支える選択肢も存在します。大切なのは、一つの方法に固執するのではなく、その子の状態やご家族の思いを踏まえて総合的に判断することです。
不安や迷いを抱えたまま悩み続けるのではなく、まずは現状を整理するところから始めてみませんか。当院では、標準治療を軸にしながら幅広い選択肢を提示し、飼い主様と共に最適な治療方針を考えています。どんな小さな疑問でも構いません。まずは診察にお越しいただき、ご相談ください。
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