2026/05/07
「血尿が出た」「うんちが細くなった」「おしっこが出にくそう」など、愛犬の排泄に関する変化に気づいたとき、不安を感じる飼い主様は多くいらっしゃいます。
こうしたサインは一時的な体調の変化で見られる場合もありますが、シニア期のオス犬では前立腺のトラブルが関係しているケースも少なくありません。
特に、前立腺にできる腫瘍(前立腺腫瘍)は、良性と悪性に分けられます。その中でも、悪性のものは「前立腺癌」と呼ばれ、早期発見が重要とされています。
そこで今回は、犬の前立腺腫瘍について、良性と悪性の違いをふまえながら、症状や治療方法、日常的なケアの方法などを解説します。
■目次
1.未去勢の高齢のオス犬は要注意|前立腺トラブルのリスク
2.症状
3.良性の「前立腺肥大」と悪性の「前立腺癌」の違い
4.診断方法
5.治療の考え方|手術だけではない選択肢
6.穏やかに過ごすために|痛みの管理と日常ケア
7.まとめ
未去勢の高齢のオス犬は要注意|前立腺トラブルのリスク
前立腺は男性ホルモンの影響を受ける臓器です。そのため、未去勢の高齢犬ほど前立腺のトラブルが起こりやすい傾向にあり、特にシニア期に増える傾向があります。
良性の腫瘍である前立腺肥大は、若いうちに去勢を行うことで予防が期待できますが、去勢をしていても発症するリスクはゼロではありません。なお、前立腺腫瘍の中でも悪性である前立腺癌は、去勢で予防することが難しいとされているため、去勢済みであっても注意が必要です。
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症状
前立腺が肥大・腫瘍化すると直腸や尿道が圧迫され、以下のような特徴的な症状がみられるようになります。
・うんちが平べったい(きしめん状)
・排便時にいきむ・しぶり(出そうとして出ない)
・血尿
・排尿困難
・おしっこの回数の増加
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これらは日常の中で比較的よく見られる変化でもあるため、「しばらく様子を見よう」と判断されやすい傾向があります。しかし、排泄の異常は体の内側で起きているトラブルのサインの場合もあるため、気になる変化が続くときには、早めに動物病院を受診しましょう。
良性の「前立腺肥大」と悪性の「前立腺癌」の違い
前立腺のトラブルには、大きく分けて良性と悪性があります。どちらも症状が似ている場合もあるため、それぞれの特徴を知っておくことが重要です。
<前立腺肥大(良性)の特徴>
男性ホルモンの影響で起こる良性の変化です。去勢手術を行うことで前立腺が小さくなり、症状の改善が期待されます。比較的ゆっくりと進行することが多く、前立腺が大きくなることで直腸や尿道を圧迫し、排便や排尿のしづらさとして症状が現れます。また、ホルモンの影響を受けているため、治療による反応が比較的得られやすい点も特徴です。
<前立腺癌(悪性)の特徴>
進行性の悪性腫瘍であり、明確な原因は分かっていません。去勢による改善は難しく、状態に応じた治療やケアが必要となります。前立腺肥大と比べて進行が速いことが多く、周囲の組織へ広がったり、肺や骨などに転移したりする可能性があります。また、痛みや全身状態の低下を伴うこともあり、早い段階で管理が必要になるケースも少なくありません。
ただし、症状だけで良性と悪性を見分けるのは簡単ではありません。そのため、動物病院で検査を受け、状態を正確に把握することが大切です。
診断方法
診断では、まずこれまでの経過や症状について、飼い主様から詳しくお話をうかがいます。そのうえで、以下のような画像検査を組み合わせて前立腺の状態を確認していきます。
・エコー検査:前立腺の大きさや内部の構造を確認
・レントゲン検査:周囲の臓器への圧迫の有無を評価
これらの検査により、前立腺が大きくなっているのか、しこりのような変化があるのかといった「異常の有無」や「状態の傾向」を把握していきます。ただし、これらの検査だけで「前立腺肥大」か「前立腺癌」かを完全に見分けることが難しい場合もあります。
そのため、必要に応じて細胞を採取して調べる検査(細胞診検査)や、組織の一部を詳しく調べる検査(組織検査)を行い、より正確な診断につなげていきます。
このように、検査は一度で結論を出すというよりも、段階的に情報を集めながら診断を進めていくことが一般的です。
なお、当院ではインフォームドコンセントを大切にし、検査の内容や目的、考えられる治療の選択肢について、飼い主様に分かりやすく丁寧にご説明しています。
そのうえで、飼い主様にご理解・ご納得いただいた内容をもとに、無理のない形で検査や治療を進めていく姿勢を大切にしています。
治療の考え方|手術だけではない選択肢
前立腺腫瘍の中でも、特に前立腺癌の場合は解剖学的に手術での摘出が難しいケースが多く、一般的には内科的治療や緩和ケアが中心となります。
特に、投薬によって排尿・排便を改善したり、痛みをコントロールしたりといった、症状緩和を重視した治療を行います。
さらに当院では、抗がん剤治療や緩和ケア、高濃度ビタミンC療法やがんワクチンなども選択肢のひとつとして提供することが可能です。また、放射線治療などのより高度な治療については、設備の整った専門施設をご案内することもあります。
飼い主様の意向を尊重し、飼い主様と一緒に最適な治療方針を決めていくことを大切にしています。
前立腺癌は進行が速い傾向があり、状態によっては数か月という比較的短い期間で病状が進行してしまうケースもあります。
ただし、すべてのケースが同じ経過をたどるわけではなく、治療やケアの内容によって過ごし方や期間は大きく変わります。
そのため、早期に状態を把握し、その子に合った治療やケアを選択することができれば、穏やかな時間をより長く過ごせる可能性が高くなります。そのため、早期発見・早期治療を行うことが何よりも大切です。
穏やかに過ごすために|痛みの管理と日常ケア
前立腺癌は進行が速いため、無理に完治を目指すだけでなく、その子にとって最適な過ごし方を考える視点を持つことが大切です。
たとえば、排泄がしやすい環境を整えたり、痛みが出ている場合には適切にコントロールしたりすることが重要です。また、食事内容を調整したり、生活スペースを見直したりしながら、負担を軽減する工夫も取り入れていきます。
このように、日常の中でできるケアを積み重ねることで、愛犬が安心して過ごせる時間を支えていくことにつながります。
まとめ
血尿や便の変化は見逃してはいけないサインであり、未去勢のシニア犬では前立腺疾患の可能性も考える必要があります。中でも、前立腺癌は進行が速いため、早めに状態を把握することで治療の選択肢が広がります。また、若いうちに去勢を行うことで前立腺肥大のリスクを下げることができるため、将来的に交配させる予定がない場合は、早めに去勢を行うことをおすすめします。
なお、当院では、犬や猫とその飼い主様に少しでも安心し、信頼して当院へお越しいただけるように、インフォームドコンセントを大切にし、しっかりとご理解・ご納得いただいた上で治療を進めていくよう心掛けております。
また、去勢に関するご相談もお受けしていますので、不安なことや気になることがある場合はまずは診察にお越しいただき、お気軽にご相談ください。
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