2026/04/13
愛犬が健康診断やエコー検査を受けた際に、「肝臓に影が見られる」「しこりがある」と伝えられると、「がんなのではないか」「すぐに命に関わるのではないか」と不安に感じられる飼い主様は多いのではないでしょうか。
肝臓に見つかるしこり(腫瘍)には、良性のものと悪性のものがあります。なかには、進行すると周囲に広がったり、全身に影響を及ぼしたりするものもあるため、小さな異変に気付いた際には早めに動物病院を受診し、適切な治療につなげていくことが大切です。
今回は、犬の肝臓のしこりに対する基本的な考え方や、検査・治療の進め方について解説します。

■目次
1.早期発見がカギ|肝臓は“沈黙の臓器”
2.慌てないで|良性の可能性も多い「肝臓のしこり」
3.犬の肝細胞癌とは?
4.診断方法
5.治療方法
6.まとめ
早期発見がカギ|肝臓は“沈黙の臓器”
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、ある程度病気が進行するまで目立った症状が表れにくい特徴があります。食欲の低下や体重減少、元気の消失といった変化に気づいたときには、すでに病気が進行しているケースも少なくありません。
また、健康診断で「肝数値が高い」と指摘されることもありますが、肝臓の状態は血液検査だけでは判断が難しい場合もあります。数値に大きな変化が見られない場合でも、画像検査で異常が見つかることもあるため、結果を総合的に評価していくことが大切です。
なお、症状が見られない段階であっても、定期的な健康診断に加えて、腹部エコー検査などの画像検査を取り入れることが早期発見につながります。特にシニア期に入った犬では、年に2回を目安に検査を受けておくと安心です。
慌てないで|良性の可能性も多い「肝臓のしこり」
まずお伝えしたいのは、「肝臓にしこり(腫瘍)が見つかった=悪性腫瘍」というわけではない、ということです。実際には、良性のしこりとして見つかるケースも少なくありません。
犬に見られる良性の肝臓の腫瘍には、主に以下のようなものがあります。
<結節性過形成>
加齢に伴って見られることが多い良性のしこりで、シニア期の犬では比較的よく認められます。多くの場合、すぐに命に関わるものではなく、経過観察となるケースも少なくありません。
<肝細胞腺腫>
肝臓の細胞から発生する良性腫瘍で、単発で見つかることが多いとされています。症状が出ないまま、偶然検査などで発見されることもあります。
<胆管腺腫>
胆管(胆汁の通り道)に由来する良性腫瘍です。比較的まれですが、画像検査などで見つかることがあります。
このように、肝臓のしこりには良性のものも多く含まれています。一方で、悪性腫瘍である「肝細胞癌」が見られることもあり、見た目やエコー検査だけでは性質をはっきりと判断できない場合もあります。
そのため、必要に応じて追加の検査を行いながら、しこりの性質を丁寧に見極めていくことが大切です。
犬の肝細胞癌とは?
犬の肝臓に発生する腫瘍の中でも、比較的多く見られるといわれているのが肝細胞癌です。これは、肝臓を原発とする悪性腫瘍であり、以下のタイプに分けられます。
・塊状型:ひとつの大きなしこりとして現れ、単一の肝葉(肝臓の一部)にとどまる
・多結節型:複数の結節ができ、複数の肝葉に広がる
・びまん型:肝臓全体に広がる
これらは、それぞれで広がり方や進行の仕方が異なるため、治療方針や予後にも違いが見られます。
なかでも、塊状型は外科的に切除できる場合には比較的良好な経過が期待できることがあります。一方で、多結節型やびまん型では広範囲に病変が及ぶことが多く、手術が難しい場合もあるため、状態に応じてどの治療が適しているかを丁寧に見極めていくことが大切です。
また、症状としては以下が見られることがあります。
・食欲の低下
・元気消失
・体重減少
・水を飲む量が増える
ただし、腫瘍が小さい初期の段階や、肝臓の一部にとどまっている場合には、ほとんど症状が現れないことも多く、健康診断や画像検査で偶然見つかるケースもあります。
そのため、しこりが見つかった際には、必要に応じてCT検査などを行い、位置や広がり、周囲の血管との関係を詳しく確認しながら、適切な治療方針を検討していくことが大切です。
診断方法
まずはエコー検査やCT検査などを行い、しこりの位置や大きさ、周囲の血管との関係を丁寧に確認していきます。
そのうえで、しこりの性質や広がり、全身の状態を踏まえながら、治療の方向性を検討していきます。また、必要に応じて病理検査を行い、しこりの性質をより詳しく確認して最終的な診断につなげていきます。
その後、診断結果をもとに腫瘍の種類に応じた治療や経過観察を行っていきます。
結節性過形成や肝細胞腺腫、胆管腺腫といった良性のしこりの場合は、症状がなく、しこりの大きさに変化がなければ、定期的な検査で経過を見ていくことが一般的です。ただし、しこりが大きい場合や出血・破裂のリスクがある場合には、手術による切除が検討されることもあります。
治療方法
肝細胞癌が疑われる場合には、タイプによって治療方法が異なります。
<塊状型の場合>
ひとつのしこりとして発生するタイプで、切除が可能な場合には手術が第一に検討されます。完全に取り除くことができれば、比較的良好な経過が期待できるケースもあります。
<多結節型の場合>
複数のしこりが肝臓内に見られるタイプで、すべてを取り除くことが難しい場合も多くあります。そのため、しこりの性質や広がり、全身の状態を踏まえながら、手術を行うか、経過観察とするかなど、その子に合った治療の進め方を検討していきます。
<びまん型の場合>
肝臓全体に広がるタイプで、外科的な切除が難しいケースが多くなります。そのため、生活の質を保つことを重視したケアが中心となることがあります。
また、肝臓は血流が豊富なため、手術には出血などのリスクも伴います。そのため、安全に治療を行うためには、事前の評価や準備がとても重要になります。
なお、当院では、現在の状態を丁寧に評価したうえで、どのような選択肢があるのかをわかりやすくお伝えし、飼い主様と一緒に今後の方針を考えていきます。
また、肝臓腫瘍の中でも外科的治療が必要と判断される場合や、より専門的な設備や管理が求められるケースでは、適切なタイミングで専門施設をご案内することがあります。
一方で、手術が難しい場合や積極的な治療を希望されない場合には、体調を整えたり、日常生活をできるだけ快適に過ごせるようにサポートしたりすることも大切な選択肢のひとつです。このように、状態やご希望に合わせて、無理のない治療やケアを一緒に考えていきます。
まとめ
犬の肝臓に影やしこりが見つかった場合でも、すべてが悪性腫瘍とは限らず、良性腫瘍である可能性も十分にあります。そのため、不安な気持ちのまま自己判断をするのではなく、検査を通して状態を正しく把握することが重要です。
また、肝臓は症状が表れにくい臓器であるため、日常の様子だけでは異変に気づきにくい傾向があります。だからこそ、定期的な健康診断やエコー検査を取り入れながら、早い段階で変化を捉えていくことが大切です。
なお、当院ではインフォームドコンセントを重視し、飼い主様のご希望や犬の生活の質を大切にしながら、検査や治療の選択肢を一緒に考えていきます。不安を抱えたままにせず、気になる点がありましたら、まずは診察にお越しいただき、ご相談ください。
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