2026/06/15
「最近、愛猫の水を飲む量が増えた気がする」
「おしっこの回数が多くなった」
「少しずつ痩せてきたかもしれない」
このような変化に気づき、不安を感じている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
猫では、水を飲む量や尿量の変化の背景にさまざまな病気が隠れていることがあります。その中でも特に注意したいのが、シニア期の猫で多く見られる慢性腎臓病です。
慢性腎臓病は初期には目立った症状が表れにくいため、気づいた時にはすでに病気が進行しているケースも少なくありません。
また、慢性腎臓病は、猫の発症率や死亡率が高い病気として知られています。一方で、早い段階で発見し適切な治療を始めることで、病気の進行を緩やかにし、生活の質(QOL)を維持できる可能性があります。
そこで今回は、猫の慢性腎臓病の初期症状や検査方法、治療方法などについて解説します。
■目次
1.猫の慢性腎臓病とは?|腎臓の働きと病気の特徴
2.見逃したくない初期症状
3.診断方法
4.治療方法
5.ご自宅でできるケア|飼い主様が日常で意識したいこと
6.まとめ
猫の慢性腎臓病とは?|腎臓の働きと病気の特徴
腎臓は、体内で発生した老廃物を尿として排出したり、水分やミネラルのバランスを整えたりする重要な臓器です。
そのほかにも、血圧の調整や赤血球の産生を助ける働きなど、健康を維持するために欠かせない役割を担っています。
慢性腎臓病とは、何らかの原因によって腎臓の機能が少しずつ低下していく病気です。特に高齢の猫で多く見られ、10歳を超える頃から発症リスクが高くなるといわれています。
また、慢性腎臓病の特徴は、初期にはほとんど症状が表れない点です。猫の腎臓には大きな予備能力があるため、ある程度機能が低下するまで体調の変化として表れにくく、「年齢のせいかな」と見過ごされてしまう場合があります。
しかし、一度失われた腎機能を完全に元の状態まで回復させることは困難です。そのため、慢性腎臓病では早期発見と早期治療が非常に重要になります。
見逃したくない初期症状
猫の慢性腎臓病の初期には、「水をよく飲む」「おしっこの量が増える」といった多飲多尿の症状がよく見られます。
腎機能が低下すると尿を濃縮する能力が弱くなり、体内の水分を十分に保持できなくなります。その結果、薄い尿を大量に排泄するようになり、水分不足を補うために飲水量も増えていきます。
ほかにも、以下のような変化が見られないか確認してみましょう。
・食欲にムラが出てきた
・少しずつ体重が減ってきた
・毛並みや毛艶が悪くなった
・嘔吐する回数が増えた
・元気がなくなり寝ている時間が長くなった
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これらの症状は加齢による変化と思われがちですが、慢性腎臓病の初期サインである場合もあります。
特に飲水量や尿量の変化は、飼い主様が比較的気づきやすいポイントです。小さな変化でも続いている場合は、早めに動物病院に相談しましょう。
診断方法
慢性腎臓病の診断では、問診や身体検査だけでなく、以下のような複数の検査結果を組み合わせながら総合的に判断します。
<血液検査>
まず、腎機能の指標となるクレアチニンや尿素窒素(BUN)などの数値を確認します。また近年では、SDMAという検査項目も広く活用されており、従来の検査項目よりも早い段階で腎機能の低下を検出できる可能性があるため、慢性腎臓病の早期発見に役立っています。
<尿検査>
尿の濃さやタンパク尿の有無を確認し、腎臓の働きを評価します。
<血圧測定>
高血圧は腎臓病の進行に影響を与えるため、必要に応じて血圧を測定します。
<超音波(エコー)検査>
必要に応じて、腎臓の大きさや形状を確認し、結石や腫瘍の有無などを評価します。
慢性腎臓病は症状が表れてから発見されることも多い病気ですが、健康診断によって早期に見つかるケースもあります。
そのため、シニア期に入った猫では半年に1回を目安に健康診断を受けることをおすすめします。
なお、当院ではインフォームドコンセントを大切にし、検査の目的や結果を丁寧にご説明しながら、ご納得いただいたうえで治療を進めています。
治療方法
慢性腎臓病は完治を目指す病気というよりも、進行をできるだけ緩やかにしながら穏やかな生活を維持することを目的に治療を行います。
病気の進行度や症状によって治療内容は異なりますが、主に以下のような方法が行われます。
<腎臓病用療法食による食事管理>
慢性腎臓病の治療で最も重要とされているのが食事管理です。
腎臓病用の療法食は、腎臓への負担となるリンやタンパク質の量を調整しながら、必要な栄養素を摂取できるよう設計されています。
病気の進行を抑えるうえで中心となる治療のひとつです。
<皮下点滴による脱水対策>
腎機能が低下すると尿量が増えやすくなり、脱水状態になりやすくなります。
そのため、病状に応じて皮下点滴を行い、水分補給をサポートする場合があります。
<吐き気や食欲低下に対する内服治療>
慢性腎臓病が進行すると、老廃物の蓄積によって吐き気や食欲不振が表れることがあります。
そのような場合には、吐き気止めや胃腸の働きを補助する薬などを使用します。
<血圧やリンの数値を整える治療>
高血圧や高リン血症(血液中のリンというミネラルが増えている状態)は、腎臓への負担をさらに大きくする要因になります。
そのため、必要に応じて降圧薬やリン吸着剤などを使用しながら管理を行います。
また、慢性腎臓病では、腎臓の血管や組織に炎症やダメージが蓄積することで、腎機能の低下が進行していきます。そのため、腎臓の血管内皮を保護したり、炎症を抑えたりすることで、腎組織の線維化(腎臓が硬くなって機能を失っていく変化)を抑えることを目的とした薬が使用されることもあります。
こうした治療を組み合わせながら、腎機能の低下をできるだけ緩やかにし、生活の質を維持することを目指します。
また、近年では慢性腎臓病に対する新しい研究も進んでいます。今後は新たな治療薬の実用化も期待されており、治療の選択肢がさらに広がる可能性があります。
ご自宅でできるケア|飼い主様が日常で意識したいこと
慢性腎臓病の管理では、以下のようなご家庭での観察やケアも非常に重要です。
◆日々の観察
飲水量や尿量、体重、食欲などを定期的に確認すると、小さな変化にも気づきやすくなります。
◆飲水環境の工夫
水を飲みやすい環境づくりも大切です。複数の場所に水飲み場を設置したり、器の素材を変えたり、自動給水器を利用したりすると、飲水量の維持につながる場合があります。
◆療法食への移行
療法食への切り替えは急がず進めることが重要です。猫によって好みや体調が異なるため、獣医師と相談しながら少しずつ移行すると受け入れやすくなります。
さらに、定期的な通院や検査を継続することで、病状の変化を早期に把握しやすくなります。
飼い主様だけで悩まず、気になる症状があれば早めにご相談ください。
まとめ
猫の慢性腎臓病は、シニア期の猫で非常に多く見られる病気です。特に多飲多尿は早期から表れやすい症状であり、飼い主様が異変に気づく重要なきっかけになります。
慢性腎臓病は完治が難しい病気ですが、早期発見と適切な治療によって進行を緩やかにし、愛猫が快適に過ごせる時間を支えられる可能性があります。
また、「年齢のせいかもしれない」と感じる変化の中に、病気のサインが隠れている場合もあります。水を飲む量や尿量の変化、体重減少などが気になる場合は、早めに動物病院へ相談しましょう。
なお、当院では飼い主様との対話を大切にしながら、その子の状態に合わせた検査や治療をご提案しております。小山市、結城市、野木町、間々田周辺で愛猫の健康について気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。
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