2026/08/14
「目やにが増えてきた」
「目をしょぼしょぼさせている」
「目が赤いけれど、市販の目薬で様子を見ても大丈夫?」
愛犬にこのような変化があると、市販の目薬を使いながら少し様子を見ようと考える飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
しかし、犬の目やにや充血、目の痛みは、ドライアイ(乾性角結膜炎)や角膜潰瘍など、治療が必要となる目の病気によって表れていることがあります。
さらに、一見すると一般的な角膜潰瘍に見えても、通常の治療では治りにくいタイプや、免疫が関わる角膜炎など、異なる病気が隠れている場合もあるため注意が必要です。
今回は、犬に見られるドライアイと角膜潰瘍を中心に、原因や症状、検査、目薬の役割について解説します。
■目次
1.犬の目やにが増えたら?まず確認したい目の症状
2.犬のドライアイ(乾性角結膜炎)とは?
3.犬の角膜潰瘍とは?ドライアイが原因になることも
4.犬の目薬にはどんな役割がある?
5.「角膜潰瘍だと思ったら違った」治りにくい目の病気にも注意
6.市販の目薬で様子を見ても大丈夫?動物病院を受診する目安
7.まとめ|犬の目やにや目の痛みは、原因を確認して適切な治療を
犬の目やにが増えたら?まず確認したい目の症状
犬の目やにには、目に入った小さなほこりなどを排出する生理的なものもあります。そのため、少量の目やにが出ているだけで、必ずしも病気とは限りません。
一方で、次のような変化が見られる場合には注意が必要です。
・黄色や緑色の目やにが増えている
・粘り気のある目やにが出ている
・白目が赤く充血している
・目を細める、しょぼしょぼさせる
・前足で目をこすろうとする
・涙が多い、または目の表面が乾いて見える
・黒目の表面が白っぽく濁っている
・目を開けにくそうにしている
特に、目を痛そうに細めている、急に目が白く濁った、目を開けられないといった場合には、角膜に傷ができている可能性も考えられます。
目の病気は見た目だけでは区別しにくいため「目やにだけだから」と自己判断せず、ほかの症状がないかも確認しましょう。
犬のドライアイ(乾性角結膜炎)とは?
ドライアイは、正式には「乾性角結膜炎(KCS)」とも呼ばれ、主に涙の分泌量が不足することで目の表面が乾燥し、角膜や結膜に炎症が起こる病気です。
涙には、目の表面を潤すだけではなく、角膜を保護したり、異物などを洗い流したりする役割があります。そのため、涙が不足すると目の表面が乾燥し、炎症や角膜の傷につながることがあります。
犬のドライアイでは、免疫の異常によって涙をつくる組織が障害されることが代表的な原因のひとつです。そのほか、神経の異常や一部の薬剤、基礎疾患などが関係する場合もあります。
主な症状は、粘り気のある目やに、充血、目をしょぼしょぼさせる、角膜の濁りなどです。慢性化すると角膜に色素が沈着したり、角膜潰瘍を繰り返したりすることもあります。
診断では、目の状態を確認するとともに「シルマー涙液試験」という検査で一定時間に分泌される涙の量を測定します。必要に応じて、角膜に傷がないかを確認する検査なども組み合わせます。
犬の角膜潰瘍とは?ドライアイが原因になることも
角膜は、いわゆる「黒目」の表面を覆っている透明な組織です。この角膜の表面が傷つき、上皮が欠損した状態を角膜潰瘍と呼びます。
原因としては、目をこする、散歩中に植物などが目に当たる、異物が入るといった外傷のほか、まぶたやまつ毛の異常などが挙げられます。
また、ドライアイによって角膜を保護する涙が不足すると、角膜潰瘍が起こりやすくなることがあります。
角膜潰瘍は痛みを伴うことが多く、目を細める、涙が増える、前足で目を気にするといった症状が表れます。角膜がむくむことで、目の表面が白っぽく見える場合もあります。
診断には、主に「フルオレセイン染色」という検査を行います。角膜を専用の色素で染め、傷のある部分に色素が付着するかを確認する検査です。
角膜潰瘍は傷の深さや原因によって状態が異なり、深い潰瘍では角膜穿孔につながるおそれもあるため、状態に応じた治療が必要です。
犬の目薬にはどんな役割がある?
「目の病気=目薬」というイメージがあるかもしれませんが、病気や目の状態によって使用する目薬や治療方法は異なります。
<ドライアイの場合>
状態に応じて、涙の分泌を促す点眼薬や、目の表面を潤すための点眼薬などを使用します。継続的な管理が必要になることもあるため、定期的に涙の量や角膜の状態を確認しながら治療を調整していきます。
<角膜潰瘍の場合>
傷の深さや感染の有無などを確認し、細菌感染を防ぐための点眼薬などを使用する場合があります。また、痛みが強い場合や傷の状態によっては、点眼以外の治療を組み合わせることもあります。
大切なのは「目薬なら何でもよい」わけではないという点です。
目の状態によって必要な薬の種類は異なります。特に、角膜潰瘍がある場合には使用できない点眼薬もあるため、以前処方された目薬を自己判断で使用したり、市販の目薬だけで長期間様子を見たりすることは避けましょう。
「角膜潰瘍だと思ったら違った」治りにくい目の病気にも注意
角膜の病気を診療するうえでは、傷があるかどうかを確認するだけではなく「なぜ傷ができたのか」「なぜ治らないのか」を見極めることも大切です。
例えば、一般的な角膜潰瘍の治療を続けても、なかなか角膜上皮が治癒しない場合があります。
そのひとつとして「SCCEDs(自発性慢性角膜上皮欠損)」と呼ばれる、難治性の表在性角膜潰瘍があります。角膜上皮がその下の組織に正常に接着しにくいため、通常の角膜潰瘍とは異なる対応が必要になることがあります。
診察や処置の際に、傷の周囲の角膜上皮が通常より剥がれやすい状態などから、このような病態を疑うこともあります。その場合は状態に応じて、接着していない角膜上皮を取り除く処置などを検討します。
さらに、角膜の炎症には、免疫が関わっているタイプもあります。免疫介在性の角膜炎では、単純な傷とは治療方法が異なるため「角膜の傷だと思って治療しているのになかなか改善しない」という経過から、別の病気を考えることもあります。
もちろん、目の症状が長引くからといって、必ずこれらの病気というわけではありません。
当院では、目の表面に表れている症状だけではなく、治療への反応や角膜の状態なども確認しながら、似た症状を示す病気の可能性も考えて診療することを大切にしています。
市販の目薬で様子を見ても大丈夫?動物病院を受診する目安
犬の目やにや充血に気づいたとき、市販の目薬を使って様子を見たくなることもあるかもしれません。
しかし、目やにや充血だけでは、ドライアイ、角膜潰瘍、結膜炎、まぶたやまつ毛の異常、免疫が関わる角膜炎などを見分けることが難しい場合があります。
特に、次のような様子が見られる場合には、早めに動物病院へご相談ください。
・目を痛そうに細めている
・目を開けられない
・目の表面が白く濁っている
・黄色や緑色の目やにが多い
・目を何度もこすっている
・目薬を使用していても改善しない
・一度よくなっても同じ症状を繰り返す
角膜潰瘍の中には短期間で傷が深くなるものもあります。
「もう少し目薬で様子を見よう」と長期間自己判断するよりも、まずは目の状態や涙の量、角膜に傷がないかなどを確認し、症状に合った治療につなげることが大切です。
まとめ|犬の目やにや目の痛みは、原因を確認して適切な治療を
犬のドライアイや角膜潰瘍では、目やに、充血、目をしょぼしょぼさせるといった、一見すると似た症状が表れることがあります。
しかし、同じように見える症状でも原因はさまざまです。ドライアイが角膜潰瘍につながっている場合もあれば、通常の角膜潰瘍とは異なるSCCEDsのような治りにくい病態や、免疫が関わる角膜炎などを考える必要があるケースもあります。
そのため、目薬を使用する際には、まず何が原因で症状が表れているのかを確認することが重要です。
愛犬の目やにが増えた、目を痛そうにしている、市販の目薬を使用してもなかなか改善しないなど、気になる症状がある場合には、お気軽にご相談ください。
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