2026/05/25
「最近、猫が咳をしている」「呼吸が少し荒いかもしれない」といった違和感に気づいて不安になる飼い主様も多くいらっしゃいます。
猫は、犬と比べると咳をする場面が少ない動物です。そのため、咳が続いていたり、呼吸の仕方に違和感があったりする場合には、何らかの異常が隠れている可能性があります。
特に注意したいのが、喘息と肺腫瘍の見分けが難しい点です。実際に、喘息のような症状が見られ、検査を進めた結果、肺腫瘍が見つかるケースもあります。
また、肺腫瘍は初期症状が目立ちにくく、気づいた時には進行している場合も少なくありません。そのため、「少し気になる程度だから」と自己判断せず、早めに状態を確認することが大切です。
今回は、猫の肺腫瘍(肺腺癌など)の特徴や症状、検査の重要性などについて解説します。
■目次
1.猫の肺腫瘍とは?|「原発性」と「転移性」の2つのパターン
2.咳・呼吸が荒い…それは喘息?見分けがつかない症状に注意
3.意外なサイン?足先が腫れる「肺指症候群」とは?
4.診断の決め手はレントゲン検査|自己判断は危険
5.治療の考え方と余命|選択肢を飼い主様と一緒に考える
6.まとめ
猫の肺腫瘍とは?|「原発性」と「転移性」の2つのパターン
猫の肺腫瘍には、大きく分けて「原発性」と「転移性」の2つがあります。
<原発性肺腫瘍とは?>
肺そのものから発生する腫瘍です。
猫では比較的まれな病気ですが、発生した場合は悪性であるケースが多く、特に「肺腺癌」がよく見られます。
初期には症状がほとんど表れない場合もあり、健康診断のレントゲン検査で偶然見つかることもあります。
<転移性肺腫瘍>
別の臓器で発生した腫瘍が、肺へ広がった状態です。
特に猫の乳腺腫瘍は肺へ転移しやすいことで知られています。なお、避妊手術をしていない猫では乳腺腫瘍の発生リスクが高まるため、注意が必要です。
また、肺は血流が豊富な臓器であるため、さまざまな腫瘍が転移しやすい部位でもあります。
このように、肺腫瘍には複数のパターンがありますが、いずれも症状が分かりにくい点が特徴です。そのため、気づかないうちに病気が進行している場合もあります。
咳・呼吸が荒い…それは喘息?見分けがつかない症状に注意
猫の咳や呼吸困難は、喘息でも肺腫瘍でも表れる症状です。
そのため、症状だけを見て「少し咳が出ているだけ」「毛玉が詰まっただけかもしれない」と判断するのは危険です。
例えば、以下のような症状が見られる場合には注意が必要です。
・咳が続いている
・呼吸が速い
・お腹を大きく動かして呼吸している
・口を開けて呼吸している
・元気や食欲が低下している
・動きたがらない
特に、口を開けた呼吸は緊急性が高いケースもあるため、早急な受診が重要です。
また、猫の咳は「ケホケホ」という典型的な咳だけとは限りません。吐きそうなしぐさに見えたり、毛玉を出そうとしているように見えたりする場合もあります。
そのため、症状が軽く見えても、背景に肺の病気が隠れている可能性があります。
なお、喘息か肺腫瘍かを見分けるためには、画像検査が欠かせません。違和感が続く場合には、できるだけ早い段階で動物病院へ相談しましょう。
意外なサイン?足先が腫れる「肺指症候群」とは?
猫の原発性肺腫瘍では、「肺指症候群(はいししょうこうぐん)」と呼ばれる特徴的な症状が見られる場合があります。
これは、肺にできた腫瘍が足先の指へ転移し、腫れや痛みを引き起こす状態です。
特に、以下のような変化が見られます。
・指先が腫れている
・足を痛がる
・歩き方がおかしい
・出血している
・爪の周囲が赤くなっている
複数の指に同時に表れるケースもあり、一見すると「ケガかな?」「爪のトラブルかもしれない」と感じる場合もあります。
しかし、実際には肺の腫瘍が関係している可能性もあるため、呼吸症状だけでなく、足先の異変にも注意が必要です。
特に、「咳もある」「呼吸も少し気になる」という症状が重なっている場合には、早めに検査を受けることをおすすめします。
診断の決め手はレントゲン検査|自己判断は危険
猫の肺腫瘍を疑う際、重要になるのがレントゲン検査です。
前述したように、喘息と肺腫瘍は症状が似ているため、症状だけで判断することはできません。そのため、呼吸器症状がある場合には、まず肺の状態を画像で確認する必要があります。
レントゲン検査では、肺にしこりができていないか、肺全体に異常な影がないかなどを確認していきます。
なお、病変の位置や状態によっては、CT検査など追加の画像検査が必要になる場合もあります。
一方で、呼吸困難を起こしている猫に対しては、無理に検査を進めるわけではありません。
呼吸が苦しい状態で仰向けにしたり、長時間保定したりすると、体へ大きな負担がかかる可能性があります。そのため、当院ではまず酸素室を活用し、呼吸状態を安定させながら慎重に検査を進めるよう心掛けています。
「検査を急ぐべきか」「まず呼吸を安定させるべきか」を見極めながら、その子の負担に配慮した対応を行っています。
治療の考え方と余命|選択肢を飼い主様と一緒に考える
猫の肺腫瘍の治療方法は、腫瘍の種類や進行度、転移の有無、全身状態などによって変わります。
主な治療の選択肢としては、以下があります。
・外科手術
・内科治療
・緩和ケア
・放射線治療などの高度医療
例えば、腫瘍が一部にとどまっており、周囲へ大きく広がっていない場合には、手術を検討することがあります。一方で、すでに転移が見られる場合や全身状態が不安定な場合には、体への負担を考慮しながら抗がん剤やステロイドなどの内科治療や、緩和ケアを中心に進めるケースもあります。
また、進行度によって余命は大きく変わるため、「完治だけ」を目標にするのではなく、QOL(生活の質)を大切にしながら治療方針を考えることも重要です。
当院では、インフォームドコンセントを重視しています。そのため、「積極的な治療を希望したい」「できるだけ苦痛を減らしたい」など、飼い主様のお気持ちも丁寧に伺いながら、一緒に方向性を考えていきます。
また、放射線治療など専門的な設備が必要な場合には、より適した環境の二次診療施設をご案内することもあります。
さらに、補助的な選択肢として、高濃度ビタミンC療法やがんワクチンなどをご提案するケースもあります。ただし、これらは一般的に行われている治療に代わるものではなく、状態や飼い主様のご希望に応じて検討する補助的な選択肢のひとつです。
「どの治療が正しいか」を一律に決めるのではなく、その子と飼い主様に合った治療方針を一緒に考えていくことが大切です。
まとめ
猫は犬と比べて咳をする機会が少ないため、咳や呼吸の異変が見られる場合には注意が必要です。
また、肺腫瘍と喘息は症状が似ているため、「毛玉かもしれない」「ただの咳だから大丈夫」と自己判断してしまうと、病気の発見が遅れる可能性があります。
さらに、肺腫瘍では咳や呼吸の変化だけでなく、足先の腫れとして症状が表れるケースもあるため、普段と違う様子に気づいた際には、早めに動物病院で状態を確認することが大切です。
なお当院では、猫の呼吸状態や体への負担に配慮しながら、必要な検査や治療をご提案しています。また、インフォームドコンセントを大切にし、飼い主様と連携しながら、その子に合った治療方針を一緒に考えていくよう心掛けています。
「咳が続いている」「呼吸が苦しそう」「足先の腫れが気になる」など、少しでも気になる症状がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
■関連する記事はこちらから
犬や猫の咳や呼吸が苦しい時|考えられる原因と緊急性の判断
愛犬や愛猫のできもの・しこりに気づいたら?|獣医が教えるチェックポイント
犬や猫の腫瘍はすべて「がん」?|良性と悪性の違いや原因を獣医師が解説
そのしこり、どう調べる?|犬や猫の腫瘍検査を段階ごとに解説
犬や猫の腫瘍はどう治すの?治療の目的と選択肢をわかりやすく解説
【獣医師解説】犬や猫のがん|ステージ・余命の「捉え方」とQOLの考え方
栃木県小山市
地域に根差した細やかな対応と最良の獣医療サービスを提供する動物病院
小山レリーフ動物病院
0285-36-3233
当院の診療案内はこちら
お問い合わせ内容の入力はこちら
0285-36-3233