2026/07/21
暑い季節になると、「愛犬の呼吸がいつもより早い」「ハァハァする時間が長い」「咳が増えた」といった変化に気付き、不安になって来院される飼い主様は少なくありません。
夏は熱中症や夏バテが心配になる時期ですが、呼吸が荒くなる原因は暑さだけとは限りません。実は、心臓病が関係している場合もあります。
特に中高齢の犬では「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」と呼ばれる心臓病が多く見られます。初期は普段どおり元気に過ごしていることも多いため、病気に気付きにくい点が特徴です。
小山市・結城市・野木町・間々田周辺でも、夏になると「呼吸が早い」「咳が続く」といった症状でご相談いただく機会が増えます。当院では、こうした症状の背景に心臓病が隠れていないかを確認するため、聴診をはじめ必要な検査を行い、原因を丁寧に見極めています。
今回は、犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状や診断方法、治療の選択肢について解説します。
■目次
1.犬の僧帽弁閉鎖不全症とはどのような病気?
2.夏に症状が目立ちやすくなる理由と見逃したくないサイン
3.僧帽弁閉鎖不全症はどのように診断するの?
4.当院ではなぜすべての犬に聴診を行うのか
5.僧帽弁閉鎖不全症の治療|薬だけではなく複数の選択肢を一緒に考えます
6.まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症とはどのような病気?
僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の左側にある「僧帽弁」が正常に閉じなくなり、送り出した血液の一部が逆流してしまう病気です。
心臓は全身へ血液を送り出すポンプの役割を担っています。しかし、僧帽弁がうまく閉じなくなると、心臓は十分な血液を送り出そうとして余分な負担がかかります。
この病気は犬で多く見られる心臓病のひとつで、特に中高齢の小型犬で発症しやすいとされています。
代表的な犬種には以下のような犬が挙げられます。
・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
・マルチーズ
・チワワ
・トイ・プードル
・シーズー
・ヨークシャー・テリア
もちろん、これら以外の犬種でも発症する可能性があります。
僧帽弁閉鎖不全症は、ゆっくり進行することが多く、初期には目立った症状が表れないケースも珍しくありません。そのため「元気だから問題ない」と思っていても、病気が少しずつ進行している場合があります。
早い段階で異常を見つけるためにも、定期的な健康診断や診察時の聴診が大切です。
夏に症状が目立ちやすくなる理由と見逃したくないサイン
夏は気温や湿度が高くなるため、犬は体温を下げようとして「パンティング」と呼ばれるハァハァとした呼吸をします。
そのため、心臓病による呼吸の異常と暑さによる正常なパンティングの違いが分かりにくくなり、受診が遅れてしまうこともあります。
さらに、心臓病がある犬では、暑さによって心臓への負担が増え、これまで目立たなかった症状が表れやすくなる場合があります。
以下のような様子が見られる場合は注意が必要です。
・呼吸が普段より早い
・ハァハァする時間が長い
・ゼーゼーと苦しそうな呼吸をする
・咳が増えた
・夜間や明け方に咳をする
・散歩を嫌がるようになった
・以前より疲れやすい
・横になって休んでいても呼吸が速い
特に、夜間や明け方に続く咳は、僧帽弁閉鎖不全症で見られることがある症状のひとつです。
また「熱中症だと思って来院したところ、検査の結果、心臓病が見つかった」というケースもあります。
もちろん、呼吸が早い原因は心臓病だけではありません。呼吸器の病気や熱中症などが関係している場合もあります。
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例えば、小型犬では「気管虚脱」によって咳や呼吸が苦しそうになることもあります。症状が似ている病気もあるため、自己判断せず、原因を調べることが大切です。
呼吸が荒い状態が続く、咳が増えてきたなど、普段と違う様子に気付いたときは、早めの受診をおすすめします。
僧帽弁閉鎖不全症はどのように診断するの?
僧帽弁閉鎖不全症が疑われる場合は、症状だけで判断するのではなく、複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。
<聴診>
まず行うのが聴診です。
僧帽弁閉鎖不全症では、血液が逆流することで「心雑音」と呼ばれる特徴的な音が聞こえることがあります。心雑音は、飼い主様が症状に気付く前の段階で確認できる場合もあるため、早期発見につながる重要な手がかりです。
<レントゲン検査>
レントゲン検査では、心臓の大きさや肺の状態を確認します。
病気が進行すると心臓が大きくなったり、肺に水がたまる「肺水腫」を起こしたりすることがあります。そのため、現在の病状を把握し、治療方針を検討するうえで欠かせない検査です。
<心エコー検査>
心エコー検査では、心臓が動く様子をリアルタイムで観察できます。
僧帽弁の状態や血液の逆流の程度、心臓の働きなどを詳しく確認できるため、診断や病気の進行度を評価するうえで重要な検査です。
当院ではなぜすべての犬に聴診を行うのか
僧帽弁閉鎖不全症は、病気が進行するまで目立った症状が表れないことも少なくありません。
そのため、飼い主様が異変に気付く前に、診察時の聴診で心雑音が見つかるケースがあります。
当院では、来院理由に関わらず、診察時にはすべての犬に聴診と検温を行っています。
例えば、皮膚トラブルやワクチン接種などで来院された際に、聴診によって心雑音が見つかり、詳しい検査へ進んだ結果、僧帽弁閉鎖不全症が判明することもあります。
もちろん、「呼吸が早い」「ゼーゼーしている」「咳が続く」といった症状をきっかけに受診され、心臓病が見つかるケースもあります。
このように、症状が出てから見つかる場合と、診察時に偶然見つかる場合のどちらもあるため、当院では毎回の聴診を大切にしています。
小さな変化を見逃さず、早期発見につなげることは、地域のホームドクターとして大切な役割のひとつだと考えています。
僧帽弁閉鎖不全症の治療|薬だけではなく複数の選択肢を一緒に考えます
僧帽弁閉鎖不全症の治療は、病気の進行度や症状に応じて選択します。
治療というと「薬を飲む」というイメージを持たれる方も多いですが、実際には内科治療だけでなく、食事療法や日常生活の見直しなども大切な治療のひとつです。
<内科治療>
症状や病気の進行度に応じて、お薬で心臓への負担を軽減したり、心臓の働きをサポートしたりします。
定期的に診察や検査を行いながら、その時々の状態に合わせて治療内容を調整していきます。
<食事療法・日常生活の管理>
食事療法も治療の選択肢のひとつです。
病状に応じて食事内容を見直したり、体重を適切に管理したりすることで、心臓への負担を減らせる場合があります。
また、日常生活では心臓に負担をかけない工夫も重要です。
特に夏は暑さによる負担が大きくなるため、早朝や夕方の涼しい時間帯に散歩したり、室内の温度管理を行ったり、興奮しすぎないように配慮したりすることが大切です。
<外科手術という選択肢>
病気が進行した場合には、外科手術が選択肢となることもあります。
外科手術では、傷んだ僧帽弁を修復する「僧帽弁形成術」が行われる場合があります。
当院では、内科治療・食事療法・外科治療のいずれかを一方的におすすめするのではなく、それぞれのメリットや注意点を丁寧にご説明し、飼い主様と一緒にその子に合った治療方法を考えることを大切にしています。
なお、外科手術が適していると判断した場合には、東京などの二次診療施設と連携し、循環器外科を専門とする獣医師をご紹介しています。
まとめ
夏の「ハァハァ」や咳は、暑さだけが原因とは限りません。中高齢の犬では、僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病が隠れている場合があります。
この病気は、早い段階で発見し、状態に応じた治療や日常管理を始めることで、良好な状態を維持できる場合があります。そのため「呼吸が早い」「咳が増えた」「散歩を嫌がるようになった」「疲れやすくなった」といった変化を見逃さないことが大切です。
当院では、来院理由を問わず、すべての犬に聴診と検温を行い、小さな異変も見逃さないよう心がけています。また、治療では内科治療・食事療法・日常管理・必要に応じた二次診療施設での外科治療まで含め、飼い主様と相談しながら、愛犬に合った治療方法を一緒に考えていきます。
小山市・結城市・野木町・間々田周辺で、愛犬の呼吸や咳、心臓について気になることがありましたら、お気軽に当院までご相談ください。
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